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2014年8月4日月曜日

「旭山動物園でホッキョクギツネが続けて8頭死亡」で考えたこと2つ

今日も朝から日刊 Zoo Ringの記事をまとめていました。
そうしたら、旭山動物園でホッキョクギツネが8頭続けて亡くなったというショッキングなニュースが入ってきました。
参考:
旭山動物園でホッキョクギツネ8頭死亡他 今日押さえておきたい動物園・水族館ニュース・セレクション(日刊 Zoo Ring)
旭山動物園の「しいくにゅーす」 ホッキョクギツネの訃報(8/3)

Wikimedia Commons より。ライセンス情報

段取り不明な情報公開

これに関して、まずは、この件に関する情報公開のどたばたを感じています。
訃報の内容が読みにくいのです。
上から順に読んでいくと、母親が7/31に亡くなっています。
そこから「続いて~」を読んでいくと、子が1頭、7/28に亡くなっています(情報公開の1週間前。母親よりも前)。
次に7/30に3頭(母親よりも前)、31日に1頭(母親と同日)が亡くなり、残された2頭が8/2(母親よりも後)に亡くなっています。
なので、時系列順に並べると、7/28(子1頭)、30(子3頭)、31(親、子1頭)、8/2(子2頭)の順になります。
さらっと読むと先に母親が倒れて後から子どもがばたばたと倒れたような印象を与えかねませんが、実際は子が数頭先に亡くなって、それから親が亡くなり、残された子もすべて亡くなったという順です。
死因が母親のみ肝臓の一部に捻転云々となっており、子のほうは出血性腸炎と分析されています。母親の死と子の死についての因果関係は8月3日時点で不明となっています。

旭山動物園のWEBサイトはもともと更新がそれほど早いほうではありません。しいくにゅーすも週に1回更新されるかどうかです。
最初の子が亡くなってすぐに情報公開できなかったのは、WEB関係のシステムがそこまでしっかりしていなかったのに加え、もしかしたら次の子の調子が悪くなっているのが分かっていたので既に即公表ができなくなっていたのかもしれません。
そうして情報公開でぐずぐずしている間に次々に8頭が亡くなってしまったということなのでしょうか。

現在、残された1頭(父親)をバックヤードに隔離して様子を見ているとのことですが、これに関しても、父親の無事が担保されたのかどうかまでは量り知ることはできません。
この1頭の健康を確認できたから3日に情報を公開した、とも思えませんので、タイミングの中途半端さを感じます。


おそらくは、混乱のさ中、ということなのでしょう。
最悪なのはこの情報を見て、変な電話なり強引な取材依頼なりが園に行って、さらに検証が遅れてしまう事態でしょう。

動物園という施設の脆さ

そしてもう一つ、動物園という施設は野生下にくらべて衛生管理が行き届いており、安全な空間だと私は思っていました。
実際、飼育下の動物は、野生では考えられないの長寿を手に入れています。
先日、天王寺動物園で亡くなったアジアゾウの春子さんが66才。現在国内最高齢の井の頭自然文化園のはな子さんが67才です。はな子さんは歯が抜け落ちており、野生化ではエサをとることすらできない状態になっていますが、元気に暮らしています。
野生下では天敵に襲われたら終わりですし、ちょっと病気をこじらせただけでも終わりです。飢えて命を落とすこともあるでしょう。
それに対して動物園では、天敵に襲われることはありませんし、ちょっと具合が悪くなったら獣医さんに診てもらうことができます(異常にスタッフが気づけるかどうかは別問題ですが)し、それ以前に病気にならないように施設の清掃等が行き届いています。エサがとれなくて飢え死にする心配もありません。

ところが、今回の件に関しては、動物園という施設が裏目に出たかも知れないと思っています。
動物園ではどうしても飼育スペースが限られてしまうので、必要以上に個体同士が近づいて生活することになってしまいます。
園内で伝染病が発生したら、その飼育スペースにいる動物すべてにあっという間に感染してしまいかねない環境だということです。動物園ではとにかく逃げ場がありません。
もっとも、その動物の習性として、一か所に集団としてまとまっていたのなら、野生下でも1グループ全滅の可能性はあるのですが。

情報公開と飼育スペースと


今回の件で私の考えた2点というのは、昨今の動物園という施設が共通して抱えているアキレス腱なのかも知れません。

情報公開と人は簡単に言います。ホームページでも作って最新の情報をつらつらと書いておけば、それだけでも立派な情報公開ではないかと。
けれども、情報公開はうまくやらないと、いや、うまくやったとしても、それについてあれやこれやと言い出す人が出てきます。
情報の流しっぱなしで済むならまだしも、それに付随して出てくる反応、それは応援かもしれませんし批判かもしれません。それに園は人をさいて対応する必要がでてきます。
そのためのスタッフを抱えている園がそうそうあるのでしょうか。
そこまでの人を雇えるほど経済的に恵まれた園がそうそうあるのでしょうかと言い換えたほうがいいかも知れません。

飼育スペースも、動物園にとっては泣き所です。
施設を作るスペースは限られています。
一方で、来園者数を増やしたり、あるいは繁殖のことを考えたりすると、動物の数は大いに越したことはありません。
どこの園もスペースの許す限りぎりぎりまで動物を増やしてしまっているのではないでしょうか。
これも、土地と、バックヤードで飼育する動物のエサを買い、その飼育担当者を雇うお金さえあれば解決できる問題、と言ってしまえるかも知れません。

結局はお金の問題に行きつくわけです。
というようなことを考えてしまう、本日のニュースでした。

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